よいお年を

年の瀬になり、寒さがとても厳しくなってきました。こういう季節はゆっくりお風呂に入ったり、コタツで皆で鍋をつついて、暖かい布団に入って寝るのが最高ですね。お湯や布団に優しく包まれていると、外の冷たく厳しい屋外でこわばった身体が少しずつ緩まっていくような気持ちになって、身体の中にグッと溜めていた息も「はぁ~」と漏れてしまいます。

ところで、本当に身体の芯まで冷え切った…という時に急にお湯に浸かると、温度差が大きくてむしろ皮膚が針で刺されたような、鋭く痛いような感覚がしたことは無いでしょうか。こういう時は、まずはシャワーやかけ湯などで徐々に身体を慣らしてから入る方が、身体への負担は少ないそうです。

僕がここから思うことは、冷たく厳しい世界に慣れ切っている子にとって、温かい優しさに包まれることは、時に脅威になりうるということです。こういう子が人の温かみを拒絶してしまうのは、今はまだそれに耐えうる自分が出来ておらず、最終的に自分が痛い思いをすることを肌で分かっているからであるように思います。そしてこの時に重要と思うことは、こちら側はいつでも受け入れられるよう場を整えつつも、後はただじっと待っておくことです。

相手が冷え切っているのに何も行動を起こさないのか?それこそ“冷たい”対応なんじゃないか?という思いもあるかもしれません。しかしその「入っても入らなくてもいい」という緩さが、その子のこわばった心身を緩めるきっかけになるとも言えるかもしれません。

また、何も起こっていないかどうかも本当のところは分かりません。湯船に溜まったお湯は形を変えて湯気となり、だんだんと温もりを持った空気になります。表面的には何もせずとも、そういう場を作っておくというそれだけで、温かい空気がその子の体温を少しずつ上げてくれます。そして相手の心身の準備が整った時、自ずとお湯に浸かれるようになるのだと思います。

今回はゆるゆるとお風呂について語りました。しかし心理療法や生活など様々な場面で、これと重なるものがあるのではないかとも思っています。皆様も、お身体には十分に気を付けて、良いお年をお迎えください。

【担当心理士:N】

2022年12月28日